sans fin

詩と散文 8

傷跡

 飢えを失い人は問う

 まだ、続けるのか、と

 苛立ちを感じ人は問う

 まだ、手放さないのか、と

 傷跡を舐めあいながら
 かくも無残な夢を見た
 あなたの左手はナイフを突きつけ
 あたしの右手は首にのびる
 誰が望んだこの結末を

 あなたは左手を動かし
 あたしは右手を動かす

 支えを失い人は問う

 まだ、生きるのか、と

勇気

 飛べない鳥が空を恨む
 鳴けない鳥が歌を恨む

 詩の書けない詩人が嘆く
 絵の描けない画家が泣く

 夢を語れない私が笑う
 心を無くせない私が歌う

 まっさかさまに
 落ちてくるものがある

 羽を動かさない鳥も
 筆を捨てない芸術家も
 振り向けない私も

 全てを
 飲み込んで

牢獄の迷子

 信頼
 全ては自分を保つ為の、欺瞞
 いくつも消えていく空
 片手をあげて
 鼓動を感じる
 信じるということ
 何より自分を
 確認しているということ
 好きだと
 胸を張って云えること

 自然よりも重く
 心よりも重く
 切なさよりも重く
 悲しみよりも重く

 大切にするべきものは
 自分の生き様と失わないらしさ

 信頼
 全ては他人と分かつ為の、傲慢
 掴んでも消えていく空
 両目を開けて
 鼓動が上がる
 思うということ
 何より自分を
 認識しているということ
 好きだと
 胸を張って云えること

 無垢よりも深く
 夢よりも深く
 気だるさよりも深く
 純粋よりも深く

 大切にするべきものは
 自分の生き様と失わないらしさ

 何よりも自分自身

二物思想

 眠りの神よ、何を思う?
 目覚めの神よ、何を問う?
 朝と夜を司る二神よ
 共に何を願う?
 請われたその身を
 何に映す?

 夢を見るのはたやすい
 夢を壊すのはたやすい

 この現世(うつしよ)で

そんな夜に

 気持ちが悪くて吐いた夜
 薄っぺらい星たちを見た
 思い思いにきらめく星は
 まわりながら蔑んでいる
 動きながら探っている
 胃の中のドロドロが流れ落ち
 夜の空は冷たく光る
 捨てられそうなこの姿を
 見ては溜息つく
 片手で口許乱暴にぬぐって
 睨みつければ
 笑える程滑稽な月が反射する
 月は星とまわる
 グルグル
 あてもなく
 気が遠くなる位悲しくて
 何故だか
 泣いた

幸福理論

 夜空の一番星を指差したら
 そんなのくだらねぇって笑われた
 ファンタジー映画観たいって云ったら
 一人で観てろって先に行っちゃった
 雨って好きなんだって傘ささなかったら
 バカじゃねぇの? って腕引っ張られた

 嫌そうに傘持ってくれた
 容赦なく頭はたかれた
 ペットボトルのお茶奢ってくれた
 映画で泣いてる私に
 ハンカチひとつも差し出さずに
 そっぽも向いていたけれど
 待っててくれた

 私、幸せじゃん?

裁き

 その雷は天地を揺るがし
 かの者に直撃した
 見渡す限りの荒地を
 嘲笑うように
 一条の光は空をも貫き
 大地を震撼させた
 両手に有り余る裁きの子らよ
 思い知るがいい
 望み果たせぬその声を
 いつしか聞くがいい

 それこそが
 裁きの宴

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